Inside JUN Machine shop

3SGのシリンダースリーブ

2010 年 1 月 19 日 火曜日 by 営業C

今回はちょっと趣向を変えて、画像無しのお話しだけにしてみようかと思った営業Cです。

たまにある質問なのですが、「○○のシリンダーにスリーブを入れて修理をしたいのですが…」

な~んて相談はよくある事です。

確かに、もう生産中止になっているシリンダーや中古シリンダーも入手できないモノに関しては行う事が多々あります。

バイクのようにスリーブの入れ替えが効くならよいのですが、車のエンジンの大半は鋳鉄製でブロックとライナーは一体式です。

アルミシリンダーの場合は鋳込みのライナーが入っていることも多いですね。

こういったシリンダーにドライライナーを入れる場合はブロック剛性により異なりますが、ドライライナーの必要肉厚は

使用目的からすると薄い方が望ましいですが、加工時の変形や圧入時の変形、運転中の変形、材料などを考慮したうえで決定します。薄すぎると運転中に波状の変形を生じますし、ピストン・ピストンリングの当たり不良も起きます。それがスカッフィングやガス抜けの原因にもなります。ですので、適度な肉厚が必要なんです。

波状変形が起きると、オリジナルシリンダーとの密着性が悪くなり熱伝達が十分に行われず、均一な冷却が得られないのでピストンにも悪影響を及ぼします。

オリジナルシリンダーとドライライナーの密着性の良し悪しがドライライナーの効果を生かすカギだったりします。

ドライライナーの最低肉厚を決定する為には、オリジナルシリンダーの残り代(肉厚)にも注意が必要なのです。

オリジナルシリンダーの残り代にもライナーと同じ事が言えますので、この残り代が少ないと機械加工も難しく、真円度が得られなかったり、上と下で寸法が変化してしまう事もあります。

また、ボアアップが前提となりますと、ブロック剛性が低下してしまう事は避けられません。

ちょっと話がずれてしまいましたが、先日、久しぶりに3SGにライナーを入れて修理をしたいとの相談を受けました。

ええ、当社は以前にトライした事がありますよ。でもあのシリンダーはダメでした。オリジナルのシリンダー肉厚が薄く、加工が難しいうえに、入れるライナーも極薄。そして鋳巣穴も出てきました。最悪のパターンでした。

必要なライナー厚みを優先するとシリンダーには穴があく。シリンダーの最低肉厚に注意するとドライライナーは極限まで薄くなり、締めシロで不具合が生じてしまう。最悪はライナーが落ちてエンジンブローやLLCがオイルに混入します。

ライナーを入れる為には色々と制限がある中でどの寸法と加工精度がベストなのかを探る旅ではあります。

現にSR20なんかは今でも形状変更を行った物を試作し実験しています。当然、トライアンドエラーなので、悪い方向へ行く事もしばしばあります。

その最たる物が3SGでした。あのシリンダーはオリジナルシリンダーの肉厚が薄すぎてどうにもこぅにもLLCが混入してしまいました。(鋳巣穴やウオータージャケットに貫通したのも原因ですが…)ですので、現状としてはリスクが大きすぎて受注をしていないのが現状です。

もし、本気でライナーを入れる場合にはブロックを一台犠牲にしてベースとなるシリンダー肉厚の最低肉厚を知るために切断して調べる事が最も確実といえるでしょう。しかし、量産ブロックの場合、鋳型ズレなどもありますので平均値を求める必要性がある事も念頭において頂きたいです。ボアピッチも重要です。サイアミズタイプかフルジャケットかなども念頭に置きながら考えなくてはいけません。こりゃまた無理難題な感じですよね。

ライナー入れと一言に言っても色々と難関が待ち構えているのです。

その当たりを少しでも理解して頂けるとありがたいです。

なんか今回は愚痴っぽいですねぇ…w

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